甘味料のはなし ~その1~

  • 歯にいい話

昨今の気候変動により長い長い夏の後、やっと秋を感じはじめ食欲の秋がやってきましたね。食欲が増し間食が増える方も多いのではないでしょうか?

 

まずはじめに砂糖がむし歯を誘発することはご存じだと思います。

砂糖を含む糖質をむし歯菌が食べてその産物として酸を産生し、この酸が歯の表面に蓄積すると歯の成分であるカルシウムが溶けだしむし歯ができます。

私たちの身のまわりには、甘味をもつ食物が 無数にあり、甘味を与えるためにショ糖以外の甘味料も使われています。ショ糖の代 わりに用いる甘味料を【代用甘味料】といいま す。代用甘味料の中にはむし歯菌が酸を作ることができないものもあります。

 

代替甘味料の種類と酸産生性

分類

甘味料

酸産生性

糖質系甘味料

単糖

ブドウ糖

果糖

異性化糖

二糖

麦芽糖

乳糖

トレハロース

スクロース異性体

トレハルロース

パラチノース

オリゴ糖

カップリングシュガー

フラクトオリゴ糖

糖アルコール

エリスリトール

キシリトール

ソルビトール

マンニトール

マルチトール

還元水飴

還元パラチノース

化学系修飾

スクラロース

非糖質系甘味料

配糖体系

ステビア

アミノ酸系

アスパルテーム

化学合成系

アセスルファムカリウム

サッカリン

*酸産生性:プラークによる発酵性、エナメル質を溶かす酸を産生できるかを示す

 

間食をするのであれば酸産生性の低い甘味料であればむし歯になりにくいと言えます。

 

 

カロリーと副作用

代用甘味料のカロリー

非糖質系甘味料などの高甘味度甘味料は、甘味度が高いため少量で甘味を 得ることができ、食品への含有量を減らすことができるため、「低カロリー甘味料」ともよ ばれています。実際、非糖質系甘味料の多くは カロリーがほとんどありません。

昨今の健康志 向の高まりから「糖質制限」という言葉が広く認知され、スーパーやコンビニでも【砂糖不使 用】【ノンシュガー】と表示された製品をよく みかけるようになりました。

すべての人にとっ てカロリーが低ければよいというわけではあり ませんが、肥満や生活習慣病などの問題により 摂取カロリーを抑えることへの関心の高まりから、この低カロリー甘味料が使用される機会も 増加しています。

 

 

代用甘味料の副作用

一方、代用甘味料には副作用もあります。 もっとも知られているのは、【糖アルコールの 緩下作用】です。

【キシリトール】などの糖アルコールは胃や小腸で消化されずに大腸に到達し ます。大腸では水分が吸収されますが、糖アルコールが大腸に大量に流れ込むと大腸での水分 吸収を阻害し、便とともに排出されてしまうため、緩下、すなわち下痢を引き起こします。

キシリトールなどの糖アルコールが含まれる菓子類には「大量に摂るとおなかが緩くなります」 と注意書きが表記されています。このため、成長途中の小児に摂取させるのは十分な注意が必要です。

また、代用甘味料によるアレルギーの 報告もありますが、報告例でもっとも多い甘味料はエリスリトール、次いでキシリトールで す。

その他、ステビア、サッカリン、ソルビ トールなども原因にあげられています。

ソルビトールは歯磨剤にも湿潤剤として含まれていますので、歯科医院で使用する際にも注意が必要です。

ほとんどの代用甘味料は一般的な白砂糖に比べて高価ですが、甘味度がショ糖の100倍 以上あるので、砂糖と同じ甘さを得るためには 100分の1以下の量でよく、結果的に代用甘味 料を使用したほうがコストは下がります。

キシリトールはキシロースという糖に水素を添加し て工業的につくられます、キシリトールはさわやかでくどさのない甘味をもち、甘味度は砂糖 と同程度ですが、カロリーは低く、糖尿病患者さんの食事等に使用されてきました。

ただし、 むし歯抑制効果だけに絞ってみると、臨床研究で使用されたキシリトールの大量かつ高頻度摂取 が臨床応用上非現実的であり、キシリトールを摂取することによる小児のむし歯予防効果については正確なエビデンスに欠けるともいわれています。

したがって、代用甘味料の使用はあくまでの補助的手段としたうえで、日々のブラッシング の徹底、フロスや歯間ブラシの併用、フッ化物の応用などを組み合わせた基本的なむし歯予防が必要です。

 

甘味料が人体に与える影響は?

最近、甘味料(糖・人工甘味料)は、齲蝕予防だけではなく、歯周疾患や心身の健康にも大きな影響を及ぼすことが明らかとなってきました。

砂糖を中心とする糖類の過剰摂取は肥満の 要因となり、糖尿病,心筋梗塞、脳卒中などを 引き起こすといわれ、世界保健機関(WHO) では、1日に摂取する糖類を、総エネルギー摂取量の5%未満に抑えるべきとするガイドラインを発表しています。

しかし、甘味料が口腔や心身の健康に与える影響についてはまだ広くは知られていません。

 

また近年は、砂糖の摂取量を減少させるため に、人工甘味料への置き換えが勧められています。

人工甘味料は、現在国ごとに評価がなされ、1日の摂取許容量などの安全な摂取レベが設定されていますが、人工甘味料の糖尿病、 虚血性心疾患の予防への有効性や人工甘味料の長期的な健康への影響については、まだ一定の意見の一致は得られていないのが現状です。

何事においても過剰に摂取するのでなくメリット、デメリットなど理解し上手く付き合っていくのが大切です。

次回につづく

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