甘味料のはなし・その4~甘味料と精神の関係~

甘味料のはなしシリーズ第4弾。最終章に突入です。
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みなさんが、大好きな甘いもの。食べるだけで幸せな気分にしてくれます。特に疲れたときなどは無性に甘いものが食べたくなりますよね。
実は、甘味料は身体だけでなく精神的な影響も与えることがあるということをご存じでしたか?本章では「甘味料と精神の関係」についてお話していきます。
血糖値と気分の変動
人間の身体は、ごはんやお菓子を食べることで、血糖値が上昇します。身体が血糖値の上昇を認めると血糖値を正常の範囲内で保つために血糖値を降下させるためのホルモンを分泌します。それが「インスリン」です。
反対に血糖値が降下しすぎると、血糖値を上昇させるホルモン「グルカゴン」「ノルアドレナリン」「アドレナリン」などが分泌されます。
アドレナリンやノルアドレナリンは神経伝達物質ともいわれ、血糖値の上昇だけでなく「心や感情」にも深く関わっています。実際にこれらのホルモンが過剰に分泌されることにより、いらいら・怒りっぽくなる、不安感増大へつながるといわれています。
つまり身体が低血糖の状態になることで、アドレナリン・ノルアドレナリンの分泌が過剰になり、いらいら・怒りっぽくなる、不安感増大に繋がるわけですが、次にこの状況を解消しようとして甘いものを無性に食べたくなるというわけです。ですが、甘味料摂取により血糖値の上昇が増強してしまいます。その結果、血糖値を降下させるためにインスリンが過剰分泌されるので、血糖値は急降下します。
このように血糖値の変動によりホルモンが分泌され、気分の変動も引き起こされるのです。
甘味料の依存について
甘いものを控えたいと思っていても、ついつい食べてしまったりやめられないと感じたことはないでしょうか。実はこれ、単に「甘いものが好き」だけでは片づけられない場合があることをご存じでしょうか。
日常的な糖質摂取により、控えたいと思っても強い欲求が続く状態になっていることがあります。たとえば、お菓子・ジュースなどの糖質の多い食品を摂取すると、血糖値が急激に上昇します。これに伴い「ドーパミン」が分泌され、幸福感や安心感を得られるわけです。
しかしその後インスリン分泌により血糖値が降下します。急激な血統の低下が起こるため、再び糖質の多い「甘いもの」を欲するというサイクルが完成してしまうのです。このような状態が続くとさらに快感を得たいという気持ちが少しずつ強くなっていき、甘味料の摂取増量や摂取しないと落ち着かない感覚が出現するといったケースもあるのです。
甘味料の依存によって摂取量が増量することは精神面だけでなく、肥満・糖尿病・高血圧・脳梗塞・心筋梗塞・がんなど多くの生活習慣病のリスク要因になりうる可能性があるため注意が必要です。
甘味料とうつ病
近年では、甘味料とうつ病の関係についてさまざまな研究がなされています。
アメリカ・ハーバード大学らによる研究グループの報告によると、「超加工食品」の摂取量とうつ病のリスク関連を調べた結果、超加工食品を過度に摂取している人は、うつ病リスクが約50%高くなる可能性があることを明らかにしました。
まだ因果関係が証明されたわけではないですが、超加工食品の中でも、とくに「人工甘味料」がうつ病のリスクを上昇させるといわれています。
甘味料と不安症状・認知機能の影響
甘味料もさまざまな種類が存在しますが、なかでも低カロリー食品や飲料に広く使用されている人工甘味料の「アスパルテーム」についてはさまざまな研究がされており、ある研究ではアスパルテームは不安症状を引き起こす可能性があるかもしれないと報告されています。
実験用マウスに、米食品医療品局が推奨する1日の最大摂取量の15%相当のアスパルテームを含んだ水を飲用させると、不安を示す行動や学習試験の成績低下が認められたそうです。さらにこの影響は、マウスの孫の代まで続くそうです。
人間においても、健康成人を対象に高アスパルテーム食と低アスパルテーム食を摂取した比較実験の結果、高アスパルテーム食品を摂取したほうが、気持ちが過敏になったり抑うつ状態を示すことがわかったとの報告もあります。
ただしこれらの影響には一貫性があるとは限らないため、個人差・摂取状況、試験のデザインによって異なる結果になることに留意しなければなりません。
*現時点でアスパルテームやほかの人工甘味料が人間の身体に対して明確に不安症状や認知機能障害の原因になると断定できる科学的根拠は十分とはいえません。したがって上記の研究結果はあくまで可能性がある・今後さらなる研究が必要とされるものとして認識する必要ある。個人差やほかの生活習慣の影響も考えられるため、極端な判断に走ることなくバランスの取れた情報収集が求められます。
みなさんいかがでしたでしょうか。甘味料とうまくつきあうためにどうすればよいかを考えるきっかけになったのではないでしょうか。
甘いものが、虫歯や肥満など身体的疾患に関係していることはよく知られていますが、気分の変動などの精神への影響についてまだあまり意識・認識されていないことが現状です。
特に砂糖や生成された炭水化物は、知らず知らずのうちに習慣化しやすいため、摂取量について日頃から意識して過ごしてみましょう。




